東西を山に挟まれたのどかな田園地帯に備前福河(びぜんふくかわ)駅はあります。昭和30年3月に開業した比較的新しい駅で、駅舎は入口が広くて天井が高く開放感があります。
ー兵庫県・JR赤穂線ー(Hyoto Pref・JR Ako Line)
所在地は兵庫県赤穂市。西に1.5キロも行くとそこはもう岡山県です。
おや? 駅名は「備前福河」。「備前」といえば岡山県の旧国名のはず。でもここは兵庫県。これはいったいどういうことなのでしょうか。
実は、駅のあるこの地区は以前は岡山県だったんです。
駅が開業した昭和30年3月は、駅の所在地名は「岡山県和気郡福河村」でした。ほどなく日生町に併合されましたが、それでも所在地は「岡山県」だったんです。
福河村は福浦地区と寒河地区から成っていましたが、そのうち福浦地区は岡山県にありながら、経済的に有利な兵庫県との結びつきのほうが強かったんです。そこで住民たちは、昭和30年7月に日生町に赤穂市への越境合併を望む嘆願書を出しました。
ところが、赤穂市議会の賛成は得られたものの、漁業権が問題となって日生町と岡山県議会は猛反対し両県の対立が激化、政府の調停にまで発展したのです。
政府は住民福祉のために赤穂市への編入はやむを得ないとしましたが、日生町がこれを拒否し、決着は着きません。
その後、国の指示を受け、両県の歩み寄りが続けられた結果、昭和38年7月にようやく福浦地区の赤穂市への越境合併が認められたんです。
そして、昭和38年9月、晴れて赤穂市への合併が行われ、兵庫県にある「備前福河駅」が誕生したというわけです。
こんな静かな地区に、国を巻き込んだ大騒動があったとはオドロキですね。
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