四角いキャンバスに地域の名所を描いたような芸術的駅舎

山形市と大江町を結ぶJR左沢線は、途中の寒河江駅を過ぎると、北に大きく迂回するよう線路が敷かれています。
その迂回した先にある駅が羽前高松(うぜんたかまつ)駅です。開業は大正11年4月で、この駅を経由するようになったのは、地元出身の議員・工藤八之助が働きかけたことによるそうです。

ー山形県・JR左沢線ー(Yamagata Pref・JR Aterazawa Line)

旧駅舎は昭和15年に改築された木造駅舎で、昭和49年11月まではこの駅から山形交通三山線が連絡し、出羽三山への参詣客や、鉱山で産出される鉱石を輸送していました。

現在の駅舎は、旧駅舎の老朽化のため建て替えられ、平成22年2月に使用開始されたものです。

全体の形は特に工夫もない角型ですが、その内側のデザインが和のテイストで、とてもインパクトのある仕上がりになっています。

それにしてもこのデザインは何をイメージしているのでしょうか。
駅から約1.5キロ北に慈恩寺があります。奈良時代に聖武天皇の勅命によって開基されたと伝えられ、さくらんぼと並んで寒河江市を代表する有名なものなんです。慈恩寺の境内にはいくつもの建築物がありますが、なかでも本堂は1618年の建築で桃山時代の様式を残し、国の重要文化財に指定されているんです。

駅舎のデザインはその本堂から取られていて、まるで正面の一部分を四角いキャンバスで切り取ったように見えます。しかしながら、列柱が並ぶ本堂のイメージを的確に現していて、高い芸術性を感じるデザインですね。